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2009年12月21日

【連載】 新月前夜、窓、そして君の事。

※ この小説は、2009年12月21日から2010年3月4日まで、「土曜日、公園にて」で連載したものですが、まとめて読めるようにしてほしいというご要望があり、ここに載せることにしました。この小説には多くのコメントとメールをいただきましたが、それらは元の連載をご覧いただければと思います。また、第2話以降は「続きをよむ」からお読みいただけます。では、お楽しみください。※

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***   第1話: 「窓」
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文・イラスト: セキヒロタカ

あれは何年前の冬だったかな。 骨のように白く細くなった月が新月になる前の晩だった。僕が「そのこと」に気づいたのは。

その日はとても晴れていて、放射冷却で外は冷え込んでいたのだけど、ブラインドの隙間から見えた三日月が気になり、ふとベランダに出たくなった。
原稿締め切りの直前だった僕は、風邪を引いてしまわないように、ファーがたっぷり付いたランチコートを着込んだ。そして、お湯を沸かして温かいコーヒーを作り、蓋付きのマグカップに入れて、ベランダに出た。
コーヒーを飲みながらベランダで月を眺めていると、僕の部屋から見て月の端がビルにかかったとき、そのビルの最上階の部屋の明かりが点いて消えてを2度繰り返した。
僕はなぜかそれが妙に気になったが、そんなことはひと月も経たないうちに忘れていた。

その翌月、その日が新月の前の晩だったことを思い出し、先月妙に気になっていたことを一緒に思い出した。
僕がベランダに出て新月前の三日月を観察していると、月の端がビルにかかったとき、またあのビルの最上階の部屋の電気が2度点滅した。
僕はそれ以来、とてもそれが気になり、毎月、新月の前の晩になると、三日月とそのビルの最上階の部屋の電気を観察した。

  ・・・

そう。
その新月の前の晩も同じように僕はその部屋(正確に言うと、そこに明かりがつくであろう窓のような場所)と三日月を観察していた。
しかし、それはいつもの新月の前の晩とは違った夜になった。
 
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