2008年04月29日

晴れた休みの日には



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晴れた休みの日は、いつものように公園に行こう。

お財布と帽子とカメラを持ったら準備完了。
服なんて適当でいいよ。

ドアを開けると、乾いた風がふわっと部屋を吹き抜ける。

「きもちいいねー。」

君は目を細めながら、外を見て言う。
外は初夏の明るさだけど、風にはまだ冷たい空気が混じってる。

ひんやりした廊下でなかなか来ないエレベーターを待つ時間も、君とこうしていられるだけで特別気持ち良く感じる。

「どうしてそんなににこにこしているの?」

君は不思議そうに言う。

「エレベーターを待っているのが楽しいから。」

僕がそういうと、「あなたはほんとに変な人」と言って君は笑う。

「わたしね、あなたの笑顔を見るのが好き。とても優しい気持ちになれるの。」

君は少し考えてから、そう言った。

廊下から見る空はとても明るくて、このまま飛び立てるような錯覚に陥りそうになる。街路樹の影は昨日より少し短く濃くなっているような気がした。

エレベータの階数表示がもうすぐ僕らの階に到着することを知らせている。
僕が映画の中に住んでいて今がエンディングなら、どれだけいいだろう、と思った。


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あれから、僕はあのエレベーターには乗っていない。
あのエレベータは今も誰かを運んでいるのだろうか。
あの廊下に吹く風は今もひんやりしているのかな。
  
  
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※ このブログは「土曜日、公園にて」に掲載した“お話”を修正・加筆したものです。最新の“お話”は「土曜日、公園にて」に不定期で掲載しています。

2008年04月22日

理想的なゴールデンウィークとは





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その年のゴールデンウィークが、僕たちにとっての最初のゴールデンウィークだった。

僕たちは、ドライブに行く予定を立てたのだけど、ひどい渋滞に巻き込まれ、結局、途中で帰ってくる羽目になった。
それから僕たちはどこに行くのもあきらめて、部屋で映画を見たり、散歩に出たりして過ごすことにした。

ヴィデオのレンタルショップまで、僕たちはいつも通る表通りではなく、1つ入った裏通りをぶらぶら歩くことにした。

まったく普通の、どうってことない路地だ。
一人で歩いていたら、なんと言うこともなく通り過ぎてしまうところだけど、二人で歩くといろんな発見があった。

僕たちは路地にあるいろんなものを写真に撮り、こっちの方から撮った方が良いだの、もっと近づいた方が良いだの、と言いながら、ぶらぶら歩いた。
途中ですずめの変な鳴き声に大笑いし、風変わりな店の看板を見て勝手に商売の内容を創作したりした。

帰り道、僕たちはコンビニエンスストアでコロッケを買い、近くの公園で並んで座って食べた。僕たちは、公園にいる鳩の行動を観察し、臆病なカラスと物怖じしない野良猫の対決を観戦した。

少しはなれたところで、親子がキャッチボールをしていた。遠くから微かにセスナ機のプロペラの音がする。

  「あ、風船。」

君が指差す方向を見ると、遠く小さく、たくさんの風船が空に吸い込まれていくのが見えた。

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晴れた穏やかな風の吹く休日。

こんな時間がいつまで続くのか分からなかったけど、僕たちは(少なくとも僕は)、この時間がずっと続くように祈っていた。
 
  
  
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※ このブログは「土曜日、公園にて」に掲載した“お話”を修正・加筆したものです。最新の“お話”は「土曜日、公園にて」に不定期で掲載しています。

2008年04月12日

しまっていこー



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「しまっていこー」

こんな晴れた春の日は野球がしたくなる。

遠くで、昼のチャイムがなってる。
風は少し甘くて不透明な匂いがした。

 


 
  
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※ このブログは「土曜日、公園にて」に掲載した“お話”を修正・加筆したものです。最新の“お話”は「土曜日、公園にて」に不定期で掲載しています。

2008年04月09日

きみといること



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君といることは、僕の中の穴ぼこを埋めること。

君といることは、僕の中のずっと弾かれていなかった絃を奏でること。

君といることは、僕の涙がやってくるところを一緒に探すこと。

僕はそうやって、君の中の穴ぼこを埋めてあげたい。

僕はそうやって、君の中のずっと弾かれていなかった絃を奏でたい。

僕はそうやって、君の涙がやってくるところを一緒に探したい。

それが僕にとって、君といることの意味。

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※ このブログは「土曜日、公園にて」に掲載した“お話”を修正・加筆したものです。最新の“お話”は「土曜日、公園にて」に不定期で掲載しています。

2008年03月26日

晴れ、ベンチ、そしてギター。




晴れてとても気持ちのいい日だったので、午後仕事を少し休んで、ビールとギターを持って庭に出た。

ベンチに座って見上げると、空と雲が最良のバランスで混ざっていた。
僕はビールを開けて一口飲んだ。

ピスタチオもなかったし、隣に君もいなかった。
僕は小さなラジカセの代わりに、ギターを弾いて口笛で「Saturday In The Park」を吹いた。

あの年の春の匂いがした。
 
 
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※ このブログは「土曜日、公園にて」に掲載した“お話”を修正・加筆したものです。最新の“お話”は「土曜日、公園にて」に不定期で掲載しています。

2008年03月18日

最初の冬、最後の春




 
その年の冬は、とても寒い日が多かったけど、天気の良い日には、僕たちは良く散歩をした。

僕達は、いつもの公園を突っ切って、そのあたりをぶらぶら歩き写真を撮ったり、ベンチに腰掛けて、暖かい缶コーヒーを分け合いながら、野良猫の毛並みの差について議論したりした。

僕はいつもの通りくだらない冗談を言い、彼女はいつもの通り笑っていた。

「あなたって、ホントに面白いよね。そういうくだらないところが好き。」

僕は、彼女の笑顔を見て、とても暖かな気持ちになった。

ニュースは、その年の降雪量は記録的なものだったことを伝えていた。
公園では、花も少し咲き始めていた。
 
僕たちの最初の冬はそうやって、徐々に最後の春へと向かっていた。
 
 
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2008年01月01日

一番星、黒猫、および、僕



その日、僕は黒猫と一緒に、とぼとぼと日暮れ時の道を歩いていた。
いつもの駐車場をショートカットする道だ。

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「一番星。」

僕は、一番星を見つけて、しばらく立ち止まっていた。

「あんなに近く見えるけど、本当はすっごい遠いところにあるんだぜ。」

黒猫は退屈そうに前足を舐めながらそう言った。

「うん、しってる。」
「宝石と違って掌に載せたりすることもできないんだ。」
「うん、それもしってる。」
「じゃあ、なんでそんなに嬉しそうにしているんだい?」

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黒猫はしばらくじっとしていたけど、駐車場の隣の石垣を駆け上がって垣根の向こうに消えていった。垣根をくぐるとき、ちら、とこちらを見たけど、何も言わずにそのまま帰っていった。
まだ、僕は一人でじっとしていた。

「あんたの人生だ。あんたの好きにするがいいさ。」

黒猫がどこかでそう言ってるような気がした。

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「僕は一番星を見つけたことが嬉しいんだよ。」

僕は、荷物を持って歩き始めることにした。
僕にだってまだできることはあるさ。
君だってそう思うだろう?

僕はダウンのジッパーを一番上まで上げて、急に冷たくなった風が入らないようにして早足で歩いた。

空はどんどん暗くなり、一番星はもっとはっきり見えるようになった。

二番目の星はまだ見えない。

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※ このブログは「土曜日、公園にて」に掲載した“お話”を修正・加筆したものです。最新の“お話”は「土曜日、公園にて」に不定期で掲載しています。

新しい日、新しい夢。



今年はなにが見えるんだろう。

なにが見えていますか?

それは同じ夢、かな。
 
 
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2007年11月23日

正午のニュース



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かなしいきもち、って、いろんなものに含まれていることが分かったそうです。

意外と知られていませんが、こんな晴れた日に飲むビールの中にも含まれているそうです。

不思議なものですね。




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2007年11月10日

銀河鉄道の夜



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僕はその日、夜行列車で遠いところへ向かっていた。

高速道路が線路の上で交差して、そのままずっと遠くまで延びている。
オレンジ色のナトリウム灯は、宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」のようだった。
架線の鉄塔が目の前を通るたびにナトリウム灯が「ちら、ちら」と明滅する。

オーディオプレーヤーは前の曲を再生し終わって、次の「Ballet Mecanique 」に進んだ。

「ボクには初めと終わりがあるんだ」*

僕は遠くで明滅を続けるナトリウム灯をぼんやり眺めながら「終わりはいつなんだろう」とだれともなく問いかけてみた。

返事は聞こえなかった。

僕は目を閉じてしばらく眠ることにした。とても疲れていたから。
うたた寝している僕の耳元でバーナード・ファウラーが歌っていた。

「音楽。いつまでも続く音楽。踊っている僕を君は見ている。」*


* (C) music by Ryuichi Sakamoto, words by Akiko Yano, translated by Peter Barakan

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作者 “hirobot” について



音楽と写真とモータースポーツを愛する翻訳屋です。




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