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象との夏。 あるいは、スウィート・ホーム・アラバマ

 
 
 
「ビールが美味い季節になってきたね」 と僕が言った。

「まぁ、僕の故郷では年中こんな感じさ」 と象は教えてくれた。

「夏が来ると、故郷が恋しくなったりしないかい?」

「年中、恋しいさ。でも、ここでこうやっているのも悪くはないよ。
暑い夏が来てビールを飲んだら、どこにいても君は僕のことを思い出してくれるだろう?
もし僕が忘れられて箪笥の隙間に落っこちて埃だらけになっていても、
きっと君は僕を思い出して、一所懸命探して見つけ出してくれるはずさ。
そうして、また一緒にビールを飲んでくれるだろうからね」

「もちろんだよ。君は僕の夏の一部だからね」

僕はそう言って乾杯し、ラジオから流れてくるレイナード・スキナードの「スウィート・ホーム・アラバマ」にあわせて歌った。

網戸越しに入ってきた風が部屋のカーテンを揺らした。

扇風機はゆっくりと夏の空気をかき混ぜていた。
 
 
  ・・・

※ このブログは「土曜日、公園にて」に掲載した“お話”を修正・加筆したものです。最新の“お話”は「土曜日、公園にて」に不定期で掲載しています。

コメント

孤独じゃない独りの時間。
大人ですねー
なのに象も僕も孤独。
大人ですよ。大人。

きたざきさん、こんにちは。
いつもコメントありがとうございます。とても嬉しいです。

僕は、きたざきさんのコメントが“大人”だと思います。

もしかして、hirobotさんは大崎善生さん好きですか? もし違ったらごめんなさい。わたしが好きな作家の一人です。なんとなくそんな気がしたので……。

ナオさん、こんにちは!
大崎善生さんは知りませんでした。
一度読んでみようと思います。
こうして知らない作家に出会えることは嬉しいですね!ありがとうございます。

そうですか。もしお時間があったら読んでみてください☆
おススメは『パイロットフィッシュ』(確か角川文庫)です(^o^

ありがとうございます!>ナオさん。
楽しみです!

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