一番星、黒猫、および、僕
その日、僕は黒猫と一緒に、とぼとぼと日暮れ時の道を歩いていた。
いつもの駐車場をショートカットする道だ。
・・・
「一番星。」
僕は、一番星を見つけて、しばらく立ち止まっていた。
「あんなに近く見えるけど、本当はすっごい遠いところにあるんだぜ。」
黒猫は退屈そうに前足を舐めながらそう言った。
「うん、しってる。」
「宝石と違って掌に載せたりすることもできないんだ。」
「うん、それもしってる。」
「じゃあ、なんでそんなに嬉しそうにしているんだい?」
・・・
黒猫はしばらくじっとしていたけど、駐車場の隣の石垣を駆け上がって垣根の向こうに消えていった。垣根をくぐるとき、ちら、とこちらを見たけど、何も言わずにそのまま帰っていった。
まだ、僕は一人でじっとしていた。
「あんたの人生だ。あんたの好きにするがいいさ。」
黒猫がどこかでそう言ってるような気がした。
・・・
「僕は一番星を見つけたことが嬉しいんだよ。」
僕は、荷物を持って歩き始めることにした。
僕にだってまだできることはあるさ。
君だってそう思うだろう?
僕はダウンのジッパーを一番上まで上げて、急に冷たくなった風が入らないようにして早足で歩いた。
空はどんどん暗くなり、一番星はもっとはっきり見えるようになった。
二番目の星はまだ見えない。
・・・
※ このブログは「土曜日、公園にて」に掲載した“お話”を修正・加筆したものです。最新の“お話”は「土曜日、公園にて」に不定期で掲載しています。
コメント
今まで信じてやってきた事は、全て本末転倒だったのかも。
「幸せを掴むためには、人一倍がんばらなければならない!!」 それは本当か?
本当に気付かなかったの?
「幸せを掴むために走っているはずなのに、どんどん幸せから遠ざかっていく…」人は多い。
「自分にとっての幸せは何だろう?」
ちょっと考えればすぐに判るはず。
「愛する人を守るために馬車馬のごとく走る」 = 「幸せ(愛する人と共有できる時間)を自ら削る」
これを本末転倒という。
今は…、悔やむしかない・・・。
投稿者: Regret | 2008年01月05日 01:39
Regret さん、おはようございます。
こちらは「土曜日、公園にて」ブログのアーカイブで、コメントいただくことがあまりないので、コメントいただけると嬉しいです!ありがとうございます。
確かにバランスって難しいですよね。
ほんとにそう思います。
投稿者: hirobot | 2008年01月05日 07:51
私も 一番星を見つけました。
とびきり輝く一番星です。
うん確かに掌に載せて転がしたり出来ないけれど、
見つけられたことは奇跡に近いから
もっと近くでその輝きを見つめられるように 私も歩き出します。
全ての荷物を そっと置いて。
見失わないように。
私自身もまた 一番星になれるかな
投稿者: みちる | 2009年09月06日 23:42
*** みちるさん ***
こんばんは。コメントありがとう。
もちろん、なれますとも。
せっかく見つけた一番星を見失わないようにしてください。
投稿者: hirobot | 2009年09月06日 23:55