晴れた休みの日には
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晴れた休みの日は、いつものように公園に行こう。
お財布と帽子とカメラを持ったら準備完了。
服なんて適当でいいよ。
ドアを開けると、乾いた風がふわっと部屋を吹き抜ける。
「きもちいいねー。」
君は目を細めながら、外を見て言う。
外は初夏の明るさだけど、風にはまだ冷たい空気が混じってる。
ひんやりした廊下でなかなか来ないエレベーターを待つ時間も、君とこうしていられるだけで特別気持ち良く感じる。
「どうしてそんなににこにこしているの?」
君は不思議そうに言う。
「エレベーターを待っているのが楽しいから。」
僕がそういうと、「あなたはほんとに変な人」と言って君は笑う。
「わたしね、あなたの笑顔を見るのが好き。とても優しい気持ちになれるの。」
君は少し考えてから、そう言った。
廊下から見る空はとても明るくて、このまま飛び立てるような錯覚に陥りそうになる。街路樹の影は昨日より少し短く濃くなっているような気がした。
エレベータの階数表示がもうすぐ僕らの階に到着することを知らせている。
僕が映画の中に住んでいて今がエンディングなら、どれだけいいだろう、と思った。
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あれから、僕はあのエレベーターには乗っていない。
あのエレベータは今も誰かを運んでいるのだろうか。
あの廊下に吹く風は今もひんやりしているのかな。
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※ このブログは「土曜日、公園にて」に掲載した“お話”を修正・加筆したものです。最新の“お話”は「土曜日、公園にて」に不定期で掲載しています。