銀河鉄道の夜
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僕はその日、夜行列車で遠いところへ向かっていた。
高速道路が線路の上で交差して、そのままずっと遠くまで延びている。
オレンジ色のナトリウム灯は、宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」のようだった。
架線の鉄塔が目の前を通るたびにナトリウム灯が「ちら、ちら」と明滅する。
オーディオプレーヤーは前の曲を再生し終わって、次の「Ballet Mecanique 」に進んだ。
「ボクには初めと終わりがあるんだ」*
僕は遠くで明滅を続けるナトリウム灯をぼんやり眺めながら「終わりはいつなんだろう」とだれともなく問いかけてみた。
返事は聞こえなかった。
僕は目を閉じてしばらく眠ることにした。とても疲れていたから。
うたた寝している僕の耳元でバーナード・ファウラーが歌っていた。
「音楽。いつまでも続く音楽。踊っている僕を君は見ている。」*
* (C) music by Ryuichi Sakamoto, words by Akiko Yano, translated by Peter Barakan
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※ このブログは「土曜日、公園にて」に掲載した“お話”を修正・加筆したものです。最新の“お話”は「土曜日、公園にて」に不定期で掲載しています。